不動産投資のための財務諸表の基礎の基礎
財務諸表を理解するには、単式簿記でなく複式簿記を理解する必要があります。
会計畑の人間でもなく、勉強したのは簡単な書籍と通信教材ですので、私ごときが説明するほどではありませんが、不動産投資をするには必須ですので少し触れておきます。
ご参考まで、私が経営の勉強をしていたときに利用した教材や書籍なども末尾にご紹介しています。
経営の勉強をしていた頃の知識がバックボーンとしてあったので、不動産投資の仕組みをスムーズに理解できたと思います。
不動産投資以外でもいろいろと役立つと思いますので、少し知識をつけておくのがおすすめです。
簡単に財務諸表の仕組みを説明します。
不動産投資のための財務諸表 3つのシートについて
貸借対照表(=B/S)、損益計算書(=P/LS)、キャッシュフローシート(=CFS)について簡単にに説明します。
不動産投資のための財務諸表 貸借対照表
何を表しているかという点では、左に総資産とその内訳。右に負債とのその内訳、および純資産とその内訳が示されています。ある時点での資産状況を示します。通常は期初と期末です。
左右の合計は必ず一致します。最終目標は純資産を拡大して、負債を減らすことになると思います。負債が少なく純粋な資産を中心に運用することが一番安全だからです。
レバレッジ効果を活用した投資は、当初は融資(負債)で総資産を膨らませることで投資効率を上げて、インカムゲインを増やすとともに、残債の減少による含み資産の拡大(純資産の拡大)を図るため、バランスシートは資産も負債も大きめになります。
なお、放置する副業では、融資を前提としない不動産投資なので、負債はほとんどありません。つまりリスクの少ない手堅い投資(安全経営)を目指します。
ちなみに、貸借対照表の考え方の例として、5年契約の保険料や減価償却は、B/Sとの関係では次のように計上されます。
・例1
5年契約の保険の場合:左の資産(現金)が減り、左の資産(長期前払費用(保険料))が増えます。よって、資産総額は変わりません。つまり先々の保険料を払っただけで、まだ使っていないので資産の内訳が変わるだけです。
1年後、1年間の保険料を使ったことになるので、経費として1年分だけ資産(前払費用)をマイナスして、損益計算書の経費に計上します。
この時点で、保険料の1年分だけ資産が減ります。その年の経費として保険料を使ったということになります。
不動産投資のための財務諸表 損益計算書
何を表しているかとう点では、
・右に売上、左上に経費、左下に利益が示されている。
・売上と利益の内訳、経費の内訳がわかり、結果いくらの利益が出たかがわかります。
・一定期間(通常1年間)の利益を計算している。
矢印は厳密にはキャッシュではないのですが、分かりやすいので記載してみました。
なお、ここで経費に計上するものは、その期に出費した金額ではなく、その期に営業活動として必要だった経費のみです。
・例1:
5年分の保険料を払った場合、お金は5年分一気に出ていきますが、1/5ずつ5年に分けて経費として計上していきます。先ほどと同じ図で、損益計算書上は図の一番右の「費用」の部分です。
・例2:
減価償却も同様です。建物を買うときにお金は出ていきますが、経費計上できるのは、法定耐用年数で割って1年あたりを出し、1年分ずつを減価償却費として毎年計上していきます。
減価償却も同じ考え方で、上記図の「前払い費用」が「建物」「土地」にあたり、「損害保険料」が「減価償却費」にあたります。
「建物」分が何年かに分けて1年ずつ「減価償却費」として損益計算書に計上されていきます。
なお、表の左右の合計は同一金額となります。
不動産投資のための財務諸表 貸借対照表と損益計算書
損益計算書で1年間の利益が算出され、その利益は貸借対照表の左の資産(ex現金)と、右の純資産に同額が入ります。1年間の利益を計算し、貸借対照表に計上されていくイメージです。
不動産投資のための財務諸表 キャッシュフローシート:
何を表しているかという点では、
収入、支出、キャッシュフローがわかります。一定期間の純粋なキャッシュ(お金)の動きがわかります。
損益計算書との違いは、売上から経費を引く際に経費計上しているが、実際にはお金が出ていかない費目(減価償却や複数年分を先払いした保険料)などは計上せず、その年に実際に現金が出ていったものだけを計上しています。
なお、収入についてもその年にが入ったキャッシュのみを計上しています
例えば、12月分の売上は、損益計算書上は売上として計上しますが、後払いで翌年に入る場合などはキャッシュフローシートには計上しません。
例:
5年契約の保険料:当初契約時に5年分支出しているので、初年のみ支出に5年分計上します。その年以外はお金の動きがないので、計上されません。
不動産投資のための財務諸表の基礎の基礎 まとめ
B/S、P/L、CFを知る。複数年分の費用の支払いの各シート上の考え方などを理解しておく必要があります。
それぞれのシートの特徴と何を示しているか、実際に不動産を買ったら、どのように計上されていくのかを理解しておいた方が良いと思います。
簿記の一部分の知識と、財務諸表の構造だけ理解して、あとは、不動産投資に関するものだけ理解すれば取り急ぎ充分だと思います。
ちなみに、ここを全く理解できないと、会計ソフトを購入しても帳簿をつけられないと思います。
また、決算書はソフトがほぼ自動的に作ってくれますが、仕訳段階の間違いや、決算書上の誤りがあっても、どこが間違っているかを探せないなど、いろいろと支障が生じると思います。
不動産投資のための財務諸表 補足1 不動産購入と減価償却について
不動産投資のための財務諸表 不動産購入時
不動産を購入します。
1 全額融資の場合
B/S:資産(建物と土地)プラス計上、負債(長期借入金)プラス計上
P/L:計上無し
CF:計上無し
B/S上は、左の資産に建物と土地が計上されます。右の負債欄に長期借入金に計上されます。
P/L上は、購入そのものは売上も経費もないので、反映されません。
CF上は、全額融資を受けて買っているので、計上されません。
2 一部現金、残り融資の場合
B/S:資産:現金マイナス、建物と土地をプラス、負債:長期借入をプラス
P/L:経常無し
CF:現金のみ支出に計上
仮に現金を一部使っていると、その分のB/S上の左の資産(現金)をマイナス、建物と土地代金相当を計上、右に負債額(融資)を計上(融資=購入価格―現金分)。
P/L上は、計上は無し。
CFは、購入時の現金分のみをマイナス計上。現金は支出したため。
不動産投資のための財務諸表 不動産の運用開始時
土地相当分は売却まで変化はありません。
B/S:資産(建物)減価償却分をマイナス。
P/L:減価償却を経費計上
CF:無し
建物分は、法定耐用年数をもとに、1年あたりの金額を算出し、減価償却費として経費で計上します。同時に資産価値が帳簿上減少して資産をマイナスします。
その後は、毎年B/Sは建物を1年分マイナス
P/Lは、1年分を減価償却費として経費計上します。お金は出てきませんが、経費となります。
CSは減価償却費は関係ありません。現金はその年は出ていかないため。
不動産投資のための財務諸表 補足2 返済金について
融資を受けて購入した場合の毎年の計上について説明します。
B/S:資産(現金)返済分をマイナス。負債(長期借入金)を(元金分)マイナス。
P/L:経費に利子分を計上できます。
CF:返済のための現金を支出に計上
経費に計上できるのは、その年に払った利子相当額のみです。なお、元金は経費にはできません。
B/S上は、返済分として現金が減少、負債も減少。負債の減少額は元金のみ。
P/L上は、利子はその年の経費にできるので、利子相当分を経費計上。
CF上は、返済金(元金返済と利子分)は実際に現金が出て行っているので、支出に計上。キャッシュは減る。
不動産投資のための財務諸表 知識を得るのに役立つ参考資料
私もそれほど勉強したわけではありませんが、参考までに利用した教材と書籍を上げておきます。後半は「【選】書籍 不動産投資関連(分野別)」の記事で紹介している「不動産投資の青色申告・決算書、確定申告等に関する書籍」です。
不動産投資をする以上、ある程度の財務・会計系の知識は必須だと思っておいた方がいいと思います。税理士丸投げでもできますが、自分の判断力は低いままとなってしまいます。
身に着けたい知識はたくさんありますので、少しずつ頑張るのがお勧めです。
財務諸表の勉強に役立った教材
1 「らくらくマナブ 日商簿記3級高速マスターNEOテキスト」LEC東京リーガルマインド
簿記に関する考え方は、この本1冊で3級水準は理解できると思います。私も本気で勉強したというよりはさらっと読み流した感じです。それでも複式簿記の基本は理解できたつもりです。
2 LEC「中小企業診断士 1次ベーシック講座(インプット) 科目「財務・会計 」
財務会計の仕組みやファイナンスについて、この教材で勉強しました。さすが資格試験のLEC、非常にわかりやすかったです。私はDVDで当時勉強しましたが、WEBの方が安くて便利だと思います。
中小企業診断士の講座も、コースだけでなく、コースに含まれる各講座別、各講座に含まれる科目別に購入できます。興味のある方は下記バナーから参照ください。
ちなみに、私は当時経営の勉強がしたくて、中小企業診断士の基本となるインプット講座の科目全てを受講しており、当時非常に参考になりました。「企業経営理論」「運営管理」なども非常に面白かったです。
不動産投資は不動産賃貸事業であり、経営ですので、ご自身のキャリアに経営的知識を持つ機会や必要性がなかったような方には非常に役立つと思いますので、勉強されることをおすすめします。
1つの授業は結構長時間ですが、動画なので30分単位に区切ってちょっとずつでも勉強することもできます。そういう意味ではスクールと違い、忙しい会社員向けです。
セットでなく科目ごとに買うと割高ですが、といって買っても放置してしまうと無駄ですので、私は1科目ずつ自己投資として購入し、少しずつ勉強していきました。
そのおかげで、不動産投資の理解が進み、小規模ですが、経営者として経営を考えることができたのはこの講座のおかげと思っています。
余談ですが、私が社会人3年目くらいまで、会社から受講を勧められた学習教材の多くがLECのものでした。
当時、会社が推奨していた教材は全部受講したので、LECの教材は非常に馴染みがあります。わかりやすくて書籍を読むだけよりは勉強が確実にはかどりますので、おすすめです。
【選】書籍 不動産投資関連(分野別)
4選! 不動産投資の青色申告・決算書、確定申告等に関する書籍
普通のサラリーマンだった私には、全く未知の分野でした。株式投資をしていたので、決算書や財務諸表は多少わかっても、具体的な帳簿への記載方法や青色申告制度や確定申告制度など、実際に自分でするには不明点だらけでした。物件を買う前からコツコツと本を読んで、領収証など証憑資料は何がいるのかなど申告時に困らないように準備していました。そんな書籍4選です。きっと役に立つと思います。
1「賢くお金を残す!大家さんのための節税対策」
喜多村洋子、長̪岐 隆弘著、ぱる出版
不動産投資の税金の仕組みを知り、対策をしないと、結局自分の手元にお金が残らないということを知ることができた大変参考になった書籍です。何も考えず、何も知らずに事業を拡大するのは逆にリスクが高いと感じます。
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2「ダンゼン得する 知りたいことがパッとわかる 青色申告と経費・仕訳・節税がよくわかる本」
脇田弥輝著、ソーテック社
一般会社員の例にもれず確定申告をしたことがない私には、青色申告や仕訳を勉強するのに大変役に立ちました。特に仕訳については、辞書的に利用させていただいています。
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3「賃貸住宅オーナーのための確定申告節税ガイド」
税理士 植木保雄著 清文社
この本に記載の内容をベースに確定申告をしました。かなりわかりやすく初心者でもなんとか青色申告をすることができました。
4 「ちょっと待った大家さん!不動産投資では賢い節税がお金をたんまりお金を残す秘訣です」
税理士法人ユーマス税理士 夫馬竜司著、すばる舎
税金に関しては、全く会社員は無頓着な方も多いと思います。不動産投資は事業で、その事業の社長に就任するつもりで、税金のことも勉強するべきだと感じました。この本はそんな当時の私に大変参考になりました。
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