不動産投資の利益とキャッシュフローの違い
Q.利益とキャッシュフローはどこが違うのか?
理論的には相当深そうですが、ここでは不動産投資でそれぞれが何を意味しているのかを算出の仕方を元に私なりに説明します。
利益とは
・その期中の売上と経費の差額というイメージです。
・損益計算書上の利益
・実際の資産変動、例えば現金が減るなどとは別次元。
キャッシュフローは
・その期中の現実の現金の動きを指す。
・キャッシュフロー計算書上のキャッシュフローを指す。
・新規物件取得に多額の現金を使って購入すれば、キャッシュフローはその年は赤字かもしれない。しかし事業としては黒字もあり得る。
なぜなら物件購入に係る金額は当該年度に全て経費とすることはできない。
・事業が黒字でも、キャッシュが残らないケースもある(例えば、デッドクロス※)
デッドクロスについては下記記事を参照ください。
単純に現金が多く残れば良いわけではなく、事業として継続的な黒字決算をしながら、キャッシュフローも得ていく必要があります。
利益とキャッシュフローの両方でとらえていく必要があるということです。
不動産投資における利益について
・利益は、売上から経費を引いたもの。
・売上・経費とも、その期中(通常1年間)のものを計上する。
・売上の入金が翌年度、経費の支払いが翌年度でも当該期中に計上する。
・逆に当該期中に支払った将来の経費(複数年契約の保険料など)は当該期中相当分しか当該期中には経費計上はできない。
未来の分は、各期中に経費計上する。
例えば、5年契約の保険に加入した場合、保険料は5年分をまとめて支払う。
契約時に現金は5年分減るが、5年間の経費相当分にあたるので、経費計上は1年相当分ずつを5年間に分けて計上する。
例えば、不動産投資の建物は数十年使用する。木造や鉄筋など構造ごとに耐用年数を決めている。
木造なら22年。よって、建物価格を22年で割り、1年分の経費として減価償却という費目で22年間に分けて経費計上する。
12月に1月分の家賃をもらったら、先に受け取っているので、現金は増えるが、住居を貸すという対価のサービス提供はまだなので、負債欄に計上し、売上には計上しない。翌年の1月分なので、翌年の売上に計上する。
このように、純粋にその年だけの事業活動を切り出した売上と経費の差額が利益となります。
そのため、当然お金の動きとは連動しません。
不動産投資におけるキャッシュフローについて
キャッシュフローは、その年の現金が収入と支出の差として、いくら残ったのかを単純に表す。
よって、キャッシュフロー計算書上は、損益計算書上の売上-経費+減価償却等になる。
「減価償却等」の加算される部分は、その年に実際には支出がない経費を指す。
損益計算書上の利益の計算では、期中だけの売上・経費としているため、お金の動きの無い部分を除外するとともに、お金の動きがあるが損益計算書上計上されないものを追加する作業をする。
その結果、その期中のキャッシュフローは次のような計算式となる。
収入―支出=キャッシュフロー
キャッシュフローについては下記記事もご参照ください。
不動産投資における利益と税金
所得税・住民税は、税金は損益計算書の利益をもとに計算されます。キャッシュフローは関係ありません。
例えば、所得税10%の方は、住民税が10%ですので、合計税率20%となり、利益×20%が税金となります(本当はもう少し複雑です)。
不動産投資における税引き後キャッシュフロー
(税引き前)キャッシュフローから実際に支払った税金を引くと、税引き後キャッシュフローとなります。
キャッシュフロー計算書で計算されたキャッシュフローから、実際に現金として出ていく税金を差し引きます。
税金も納めた後のキャッシュフローが税引き後キャッシュフローです。
不動産投資を行い、本当の意味で手元に残る現金がこの税引き後キャッシュフローです。私などは、正直結構少なくてがっくりすることもしばしばです。
不動産投資におけるキャッシュアウト
家賃収入から支出(当該期中に現金が出ていく経費や返済金)を引きます。
そうすると、リフォームにコストがかかったり、空室で家賃が入らなかったりした場合には、キャッシュフローはマイナスとなり、この状態をキャッシュアウトと言います。
逆に、現金が残る場合、キャッシュフローがプラスである場合を、キャッシュインと言います。
デッドクロスについて
順調に利益を出し、税引き前キャッシュフローが出ていても、税引き後キャッシューフローがマイナスになる瞬間にいずれ至ります。
その後は利益が出ても、税引き前キャッシャフローが出ても、税引き後キャッスフローはマイナスが続きます。
この転機となるタイミングをデッドクロスと呼びます。
デッドクロスとは、
・税引き前キャッシュフローがプラスでも、税引き後キャッシュフローがマイナスになる分岐点。
・主な理由は、減価償却の終了や返済額の利子部分の減少(元金部分の増加)
なぜデッドクロスが発生するかは、大きな影響があるのは減価償却費です。
減価償却費は建物取得価格がもとになっているので、毎年大きな経費として計上していますが、購入時に先払い済み(融資の場合は、融資により先払い済)のため、毎年は現金が出て行きません。
減価償却費は償却期間が終わると、計上できなくなり、結果として相当額が利益となります。
また、融資の返済金は、利子分のみが経費として計上されます。元利均等返済で融資を受けていると、返済金は一定額のため、毎年現金が出ていく。
しかし、内訳は、返済期間後半程元金返済が多くなり、利子部分が減ります。つまり、経費として計上が後半程できなくなり、経費の減少、すなわち利益の増加となります。
もちろん完済すると、現金は出ていかなくなり、キャッシュフローは改善されます。
このように、減価償却が終わると利益が増え、その頃は返済金の経費に計上できる範囲も少なくなり、どーんと利益が出ます。
そのため税金を計算すると従来と比べて非常に大きな金額になり、いずれキャッシュフローが納税によりなくなり、さらにマイナスになります。
まとめ
利益とキャッシュフローが示すものを理解する。
税金は利益に対して税率をかけて算出する。税金の額とキャッシュフローは関係がない。
キャッシュフローは税引き前と税引き後を理解する。
デッドクロスを理解する。減価償却が終わり、利益、税引き前キャッシュフローがプラスでも、税引き後キャッシュフローがマイナスになるタイミングをデッドクロスと呼ぶ。
その後は、そのままでは改善されないため、何らかの手を打つ必要がある。