不動産投資のキャッシュフロー はじめに
不動産投資で多用する単語、キャッシュ・フロー(CFとも略します)について説明します。
英語で書くと「Cash Flow」、直訳するとお金の流れですね。投資して、実際に現金がいくら入ってきたのかを示します。
(キャッシュフローはイン・フローとアウト・フローの「入」と「出」のフローがありますが、ここでは、最終的にお金が入ってくるイン・フローをベースに記載しています)
不動産投資で出てくるのは、売却時のキャッシュフローと所有時のキャッシュフローがあります。
さらに、キャッシュ・アウトとデッド・クロスについても簡単に触れておきます。
不動産投資のキャッシュフロー 毎月の家賃収入から
毎月家賃収入が入り、そして様々な経費を精算し、融資の返済金を払います。すなわち次のような式になります。
毎月のキャッシュフロー(1)=家賃収入-経費-返済
年間でみると、固定資産税・都市計画税を払うので、年間キャッシュフローは単純に12倍とはなりません。
また、年によってはリフォームや修繕費などがかかり、キャッシュフローが減少することもあります。
キャッシュフロー(2)=(1)ーリフォームー固定資産税等
よく出てくるのは、税引き前と税引き後のキャッシュフローです。
私が使う税引き前キャッシュフローは、所得税・住民税(復興税込み)を引く前のもの。すなわち上記(2)です。
税引き後キャッシュフローは、所得税・住民税(復興税込み)を引いた後となります。
税引き後キャッシュフロー(3)=(2)-所得税・住民税(事業税)
不動産投資のキャッシュフロー 物件売却時に
売却時のキャッシュフローは、次の計算式です。
税引き前キャッシュフロー(1)=売却価格-諸費用-融資残債
インカムゲインと同じく税引き前と後のキャッシュフローがあります。
税引き後は複雑ですので、別の機会に解説します。計算式だけ記載しておきます。
税引き後キャッシュフロー=(1)-TAX(=(売却価格-簿価※-諸費用)×税率※)=
※1簿価=取得費(購入価格+諸費用)-累積減価償却
※2税率=短期譲渡(所有期間5年以下)39.63%or長期譲渡(5年超)20.315
不動産投資のキャッシュフロー まとめ
キャッシュフローとは現金の流れを指し、投資の結果、実際に手元に残った現金を指します
キャッシュフローの用語は、インカムゲインとキャピタルゲインの両方で使い、また、税引き前・税引き後がある。
・キャッシュフローの計算方法も多数ある。
・不動産業者等の説明時、キャッシュフローの内容をよく把握しておく。
・必ず自分が使うキャッシュフローに計算しなおして、自分の基準と比較する必要がある。
そのためには、ざっと計算できるようになることが必須です。
不動産投資のキャッシュフロー キャッシュアウトとは
キャッシュアウト:毎月の家賃収入よりも支出が多く、現金が残らない状況。現金が持ち出しとなる状況。
当然、空室期間はキャッシュアウト(正確には、キャッシュ・アウト・フロー)になります。年間でとおしてキャッシュ・イン・フローがあれば問題ありません。
または、一定期間の入居者の入替を想定して、その一定期間で想定内のキャッシュフローがあるなら問題ありません。
なお、下記のように数年を平均化した1年あたりの空室率で考えておくといいと思います。
空室率の計算方法の1例。
4年に1度入居者が入替わり、入退去に伴う空室期間が60日とすると、
空室率6.6%(=60日÷365日*4年)
複数持っていれば、他のキャッシュフローで月次もキャッシュアウトしないようになっていきます。
物件を購入したときは、ほぼ満室でわずかのキャッシュフローがある。
しかし、その後退去があった後の空室が埋まらない、家賃を大幅に下げざるを得ない、リーシング(入居者付)に多額の広告費(家賃の半年分)等がかかるなどで、キャッシュアウトするという話をよく聞きます。
セミナー等でお会いした方の何人かが、そのようなことをお話していたことがあります。
全額融資で購入し、購入直後からキャッシュアウトしている。
毎月1、2万円の持ち出しとなっているシミュレーションをセミナーではよく見ました。
その数年後、新築家賃から中古家賃となり、家賃収入がダウン、空室率増加、広告費増加などで、ますます毎月の持ち出しが拡大する。
そのような物件を3戸も買っている人もいました。
但し、敢えてそういう投資をしている人もいます。例えば、キャピタルゲイン狙い。
融資期間を短くとって、残債を大きく減少させて、売却時に利益を得る方法。全額融資だと理屈上0円で購入し、同額で売れれば、融資の返済分だけ利益が発生します。(実際には売買コストやTAXがかかります)
または、節税効果など。
赤字事業を抱えることで、トータルで黒字経営としつつ、収入を減らして節税効果を狙うなど戦略的に活用することもあり得ます。
不動産投資のキャッシュフロー デッドクロスとは
デッドクロスは、税引き後キャッシュフローがマイナスになることです。
もう少し丁寧な言い回しをすると、
損益計算書上利益が出ているため所得税等が発生し、税引前キャッシュフローがプラスでも、そのキャッシュから納税するとキャッシュアウトすることを指します。
なぜ現金が残らないのに、利益が発生するかの1例については、下記のとおりです。
減価償却費に関係して
大型の経費である減価償却費※が一定年数経つと計上できなくなることで、全体の経費が小さくなり、その分、損益計算書上、利益が大きくなります。
しかし、減価償却費がなくなっても実際にはお金の支出状況は変わらないので、税引き前キャッシュフローは変わりません。
結果、納税額は大きくなり、税引き後キャッシュフローはキャッシュが残らず、マイナスになる。
22年を超えた中古のアパートは、建物価格を4年で減価償却します。
建物価格が大きいと、初めの4年は減価償却が大きく、節税効果が高く、キャッシュフローが多くてたくさんお金が残ります。
しかし、5年目は減価償却が0円となり、いっきに税金があがり、キャッシュフローが減る、または、なくなります。
融資の返済に関係して
また、元利均等返済の融資を受けている場合、返済金に占める元本の割合が年々増えていきます。
一定額の返済ですが、損益計算書上は利子相当分しか経費計上できないため、徐々に経費が減っていき、その分利益が大きくなります。結果、税金が高くなります。
・元本の減少分は経費計上できない。利子相当分のみ経費計上が可能。
・元利均等返済の場合、返済年数が進むと、月々の返済額の内、利子が減少し、元本の返済割合が増加。
・経費が減少し、結果、利益が増える。
・元利均等返済のため返済額は一定。税引き前キャッシュフローは同じ。
・結果、キャッシュフローが一定のため、増加した税金の分だけキャッシュフローが減り、いずれはキャッシュ・フローがマイナスになる。
このデッドクロスは必ずどこかで発生しますので、先々の対策を練っておく必要があります。
売上-経費=利益
・経費が減少する=減価償却が計上できなくなる。利子分の返済が減っていく
・結果、利益が増加。⇒ TAXが増加
家賃収入-支出=税引き前キャッシュフロー
・収入、支出、キャッシュフローとも変化無し。
・減価償却に相当する支出はない。毎月の返済額は一定。
税引き後キャッシュフロー(減少)=税引き前キャッシュフロー(変化無し)―TAX(増加)
税引き前キャッシュフロー < TAX
となると、デッドクロス
※減価償却とは
建物については、各建物の種類ごとに税法上の耐用年数が設定されている。
例えば木造アパートなら22年。その場合建物の取得費(建物購入相当額+諸費用の一部)を22等分して、毎年減価償却経費として経費計上できる。
購入時に一気に計上するのではなく、実際の支出は初年度だけだが、使用期間とともに徐々に計上していく制度。
この場合、22年目で償却しきると、翌年から経費として計上できなくなります。どんな物件を購入してもいずれ減価償却は0になるので、そのタイミングが来ることを想定して準備をする必要があります。